マコンブLaminaria japonica胞子体片を用いて培養条件下で成熟誘導を試みた。また、自然環境下での子嚢斑形成状況と比較検討した結果、以下のことが明らかになった。 1. 胞子体片を用いてた培養で子嚢斑形成が可能となった。 2. 子嚢斑形成は15℃で最も早く、かつ大きな子嚢斑を形成した。 3. 子嚢斑面積は高光量ほど大きかったが、その形成時期は光量に左右されにくかった。 4. 短日条件下での子嚢斑形成は、等日および長日条件下に比べ早かった。 5. 貧栄養条件は胞子体片の子嚢斑形成を遅らせかつ、その面積を著しく制限した。 6. 子嚢斑形成には、ある一定以上の栄養元素の蓄積が必要であることが示唆された。 7. 胞子体基部に比べ先端部の胞子体片の方が子嚢斑形成が早く、また中帯部に比べ縁辺部の方が容易に子嚢斑を形成する傾向が見られた。 8. 自然環境下での子嚢斑形成は縁辺部に先立ち中帯部から形成される場合が多かった。 9. 視覚的な子嚢斑形成以前に既に胞子体片内では種々の変化生じており、その変化は光合成の低下、呼吸の増加、タンパク質合成に特徴づけられる。 10. ホソメコンブ、ガゴメ、アナメ胞子体片でも子嚢斑を形成させることができた。 以上の結果から、一年中を通して個体やその採取部位によらず胞子体片を培養することにより子嚢斑を形成させることが可能であることが示された。この胞子体片を用いたマコンブは他のコンブ属植物にも応用でき、採苗方法は時期に左右されずに付着生物等の影響の少ない種苗を提供し得る可能性を示すものである。
|