環形動物スピオ科に属する多毛類は、さまざまな石灰基質に穿孔する種と、岩盤のすきま・砂泥底等に生息する穿孔しない種があることが知られている。本研究は、有用貝類に穿孔することにより防除・駆除の対象となるスピオ科多毛類の最大の特徴である"穿孔"の機構に迫り、その解明を目的とするものである。 これまでの研究で、穿孔能力の有無は種特異的であり、穿孔する種では幼生〜幼若個体の定着・穿孔開始時期にのみ現れる球状物質の存在が示唆されており、今回そのものの消長を穿孔性・非穿孔性の2タイプの種類ごとに調べた。穿孔性2種、非穿孔性2種の計4種で調べた結果、穿孔性2種では異なる幼生発達パターンをもつにもかかわらず、球状物質は、卵のう内の幼生・泳出後の浮遊期幼生・クローリング期幼生に存在し、着底後、泥管をつくり、穿孔へとステージがすすむに連れて次第に存在が不明確になり、穿孔開始後には確認されなかった。非穿孔性2種では、卵のう内幼生、浮遊幼生、着底後どのステージにも球状物質は存在しなかった。一方、穿孔との関係が示唆されている粘液腺は、穿孔非穿孔に関係なく存在した。 穿孔機構に深く関わると推察される第五剛毛と球状物質の元素分析を行った結果、剛毛の元素組成には、種による違いはみられなかったが、剛毛の先端と基部に違いがみられた。また、球状物質の元素組成については、現在分析中である。 今回、石灰基質(マガキ、サザエ等)より摘出された多毛類2種、淡水海綿から摘出された1種が新種であることがわかり、現在投稿中である。また、今回の結果を含む穿孔・非穿孔の比較に関する一連の結果は、現在投稿中である。
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