研究概要 |
1.市場調査による鼻孔異常個体発生率と地域差の解明 鹿児島市魚市場に水揚げされたマダイの鼻孔調査を行い,鼻孔異常個体の出現頻度を明らかにした。漁場は鹿児島湾内,開門,北薩,志不志,種子島に分類された。鼻孔異常個体の出現率はそれぞれ54%(244/531),5.6%(7/124),1.6%(16/1029),0%(0/38),0.6%(2/358)となり鹿児島湾内で卓越した。 養殖マダイの鼻孔異常発生率調査は牛根(鹿児島湾内),鹿児島県出水群長島,大島で生産されたマダイを対象に行った。鼻孔異常発生率はそれぞれ95%(298/314),98%(232/237),77%(550/714)となり,鼻孔異常発生率は生産業者によって異なった。 2.電気生理学的手法による嗅覚受容能力の相違の解明 養殖マダイと天然マダイを材料に,電気生理学的手法により各種アミノ酸に対する嗅球応答を記録し,それぞれの応答強度を比較した。 刺激溶液にはL-Glutamine,L-Methionine,L-Alanine,L-Threonine,L-Leucine,L-Serineを用いた。卓越した応答は養殖マダイ,天然マダイともにL-Glutamineで得られた。1.67×10^<-4>Mの各種アミノ酸に対する応答強度を比較した結果,L-Alanmine,L-Threonineに対する応答は養殖マダイで有意に低下した。 電気生理学的実験からは養殖マダイと天然マダイで数種のアミノ酸に対して嗅覚応答に相違が認められ,両種の魚で嗅覚器の受容能力およびその機能が異なることが示唆された。 平成10年度は鹿児島県栽培漁業協会の協力を得て,産卵直後から稚魚期(3月下旬〜5月上旬)において,各成長段階毎の鼻孔異常発生率およびその過程の追跡を計画に付加して行う。
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