研究概要 |
遡河回遊魚であるシロウオは3〜5月に産卵のために河川を遡上する.平成9年度に研究室で繁殖させた個体は飼料であるアルテミアのn-3系高度不飽和脂肪酸強化によって現在も百のオーダーで飼育を継続している.この飼育個体を定期的に抽出し卵巣卵の変化を組織学的に調べているが,1月現在では周辺仁期の卵巣卵であり未だに卵黄蓄積は見られない.また,1〜2月に静岡県の清水港内で採集した数十匹のシロウオでも飼育個体と同様の結果が得られた.遡上前の本種は核移動期の卵巣卵を持っている事はすでに知られている.これらのことからシロウオの卵黄蓄積は遡上までの約1ヶ月で完了すると考えられ,平成10年度にかけて調査を続する予定である. 次に平成9年4〜5月に遡上したシロウオに営巣させ,定期的に巣内から営巣個体を抽出し,卵巣卵摘出後24時間培養し,培養液中に分泌されたステロイドホルモンを酵素免疫測定法で測定した.抽出した10個体ではGSIが0.16〜0.25であり,17α,20β-dihydroxy-4-pregnen-3-oneは検出されなかった.営巣させてから5日目に抽出した10個体ではGSIが0.43〜0.82と高くなった.その内2個体で卵巣卵が24時間に17α,20β-diOH-pを53.6,73.6pgと僅かに分泌したがその他の8個体では検出できなかった.10日目では抽出した22個体のうち12個体が産卵後であった.10個体のGSIは0.71〜1.6と著しく高く,それらのうち7個体の卵巣からは24時間で137.7〜662.2pgの17α,20β-diOH-pを分泌した.12日目では抽出した46個体中36個体が産卵終了していた.残りの10個体のGSIは0.86〜1.68であり,多くの個体で高い傾向を示した.さらに17α,20β-diOH-pは全ての個体で検出され169.7〜1644.4pgと大量に分泌している個体が見られた.なお,estradiol-17βについては全て測定上限を超えたため,再度測定している.
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