研究概要 |
1.自発摂餌活動のサーカディアンリズムにおよぼす松果体験去の影響 松果体以外の部位に生物時計が存在するかどうか検討するため,松果体除去ニジマスの自発摂餌活動を計測した.その結果,ニジマスは松果体除去の有無にかかわらず,明暗条件下では明期活動型の日周リズムを示し,このリズムは恒明条件下でも自由継続した.よって,ニジマスでは松果体以外の部位に自発摂餌活動を制御する生物時計が存在することが明らかになった.この生物時計は脳内に存在すると予測された. 2.魚類における脳内生物時計の存在部位の検索 生物時計指標神経ペプチドの脳内分布を免疫組織化学的に検討し,哺乳類の視交叉上核と相同な魚類脳内の神経核同定を試みた.しかしながら,特定の部位が視交叉上核と相同であると断定できるような染色像は得られなかった.また,魚類においても脳内生物時計の光同調に関与する神経路が存在するかどうか検討するため,キンギョの眼球および松果体にトレーサー(バイオサイチン)を注入し,それらの神経投射部位について検討した.その結果,網膜からの神経投射については視蓋に投射する神経路の存在が再確認されたにとどまった.また,松果体からは手綱核付近に投射する神経線維の存在が確認されたが,視床下部に直接投射する神経線維の存在は確認できなかった. 3.時計遺伝子cDNAクローニングの試み 上述の組織学的な手法を用いても魚類の脳内生物時計の局在を証明するには至らなかったので,新たなアプローチとして生物時計を支配する遺伝子(すなわち時計遺伝子)のcDNAクローニングを試みた.3種のマウスperiod遺伝子(mPerl,mPer2,mPar3)によく保存されているPAS-Bドメイン付近より縮重プライマーを作成し,PCR法によりニジマスperiod遺伝子のcDNAクローニングを現在試みている.
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