ノロ(Leptodora kindti)は、琵琶湖産アユの主要な餌料生物である大型動物プランクトンである。この動物は、線虫の一種Raphidascaris biwakoensisの中間宿主と考えられているが、寄生の経路については明らかでない。昨年度に続き、ノロの鉛直分布と本線虫のノロへの寄生の実態を明らかにすることを目的として、現場調査を98年8月19日日没前および後、20日深夜、日出前および後、日中および夕刻に、琵琶湖北湖の尾上沖で行った。蛍光光度計付CTDによる鉛直プロファイリングに基き、直読深度計付プランクトンネット(口径45cm、目合0.5mm)で、表水層、クロロフィル極大層、水温躍層上端、同下端、深水槽の各層で水平曳きして得た試料について、実験室で動物プランクトンを選別計数し、種別に1m^3当りの個体数を算出した。その結果、ノロの主分布層は日中にはクロロフィル極大層と表水層底部に多く、深夜にはより上方に移ることがわかった。いずれの時間帯においても、ノロは餌となる動物プランクトンが多い深度に定位しようとしていたものと推測された。寄生の有無が鉛直分布に影響しているかどうかは判断できなかったが、被寄生ノロはサイズが大きい傾向が明らかであった。これらは、97年8月下旬に行った北小松沖における観測の結果と同様であった。ノロは、餌として小型動物プランクトンを用意すれば飼育可能で、今後の室内実験の基盤が固められた。
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