温泉などの高温環境に生息するラン藻をターゲットに、他の環境からは得られない新規の化合物を得て、様々な生命現象に関与する蛋白分解の阻害剤の開発を目的に本研究を行った。 まず第1に、昨年度確立した高熱環境に生息するラン藻からのスクリーニングシステムにより、蛋白分解阻害活性のスクリーニングを継続した。栃木県内の温泉より採取したラン藻を、研究室で予備培養後、単一な藻種として単離し、数リットル規模の培養を行い、培養藻体からの抽出液および培養ろ液からスクリーニング用試料を調製した。これまでに培養の完了した約70種の株について、パパイン、トリプシン、キモトリプシン、トロンビン、エラスターゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼM、プロリルエンドペプチダーゼなどの酵素阻害活性を測定し、昨年度の結果に加え、多くの株に阻害活性を見いだした。 次に、トロンビンに対し阻害活性を示した未同定藻類とプロリルエンドペプチダーゼに阻害活性を示した未同定藻類について大量培養を行い、その活性本体の精製を試みた。脂溶性の低極性物質の複数成分により活性を発現すると考えられた。また、アミノペプチダーゼMに対し阻害活性を示した未同定ラン藻についても、大量培養後、活性物質の精製を試みた。その結果、水溶性のペプチド性化合物であることが示唆された。 今後、これら化合物から実用的な蛋白阻害剤が開発されることが期待される。
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