研究概要 |
海洋微細藻Gymnodinium A3をESM培地、21.5℃、3,500lux、2カ月間培養した後、細胞外に生産された粘稠性物質をEtOH及びCTAB沈殿法によって酸性多糖を得た。更にDEAE-セルロースイオン交換クロマトによって0.8M(GP1)、1.0M(GP2)、2.OM NaCl(GP3)溶出画分多糖を得た。GP2の構造は-4)-β-D-Galp(1-のガラクタンのC-2に硫酸基がエステル結合し、C-3に乳酸基がエーテル結合している乳酸含有硫酸ガラクタンと解析され、GP1はGP2及びGP3と同様な構造をもつ硫酸ガラクタンであるものの、乳酸含有率が低いことが認められた。 GP2はヒト骨髄リンパ系培養細胞U-937及びK562細胞に対して細胞毒性を有していた。細胞毒性機構として、GP2が培養細胞表面に付着し、細胞内の核酸に細胞増殖の抑制や細胞死等の命令を発していると考えた。U937細胞に対しては細胞内の核酸タンパク質リン酸転移酵素活性の減少を引き起こし、このことによって有糸分裂阻止及びアポトーシス誘導を起こすことが認められた。また、K562細胞に対しては細胞内のテロメラーゼ阻害を引き起こし、ガン細胞の増殖を抑制することが認められた。更に、ヒトDNAのトポイソメラーゼ阻害活性を有しており、ガン細胞の増殖阻止が考えられた。また、乳酸含有率の低いGP1において、これらの作用が認められなくなったことより、これらの作用機構において、乳酸の結合が重要な役割を有していることが考えれる。 これらのことより、海洋微細藻Gymnodinium A3の生産した乳酸結合硫酸ガラクタンはヒト骨髄悪性リンパ腫に対して抗ガン作用が期待されることが示唆された。
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