研究概要 |
本研究では、ダイシハーベイン(DH)およびその関連化合物の構造、生理活性、絶対構造そして構造-活性相関について検討を行なった。DHはnon-NMDAタイプのグルタミン酸受容体に結合して、アゴニストとして作用することが示されたきたが、本研究では、さらにその薬理活性を詳しく評価するために、マウスを用いたin vivoでの活性、培養神経細胞およびラットのシナプス膜標本におけるin vitroでの挙動を既知の興奮性アミノ酸と詳しく比較した。その結果、DHはマウスに対して既知の興奮性アミノ酸中最強の、興奮性活性を示すことが明らかになった。一方、ラットのシナプス膜標本に対してDHはカイニン酸,/AMPA受容体に選択的ではあるが弱い結合を示したにとどまった。このような活性パターンをもつ興奮性アミノ酸は知られておらず、DHが受容体とのユニークな相互作用を有することが示唆された。 我々はさらにDHの絶対構造、構造活性相関、生合成機構に関して有用な知見を得るためにD.herbaceaよりDH誘導体の作製および関連化合物の単離を試みた。DHの誘導体として、メチルエステルおよびFmoc化誘導体が得られたが。絶対構造情報を得るための誘導体作製の条件は現在検討中である。一方、DH関連化合物の探索の結果、新規アミノ酸誘導体であるダイシベタイン(DB)の単離、構造決定に成功した。DBは4-hydoroxy-5-oxoprolineのα位に(trimethylammonium)methyl基が置換した新しい骨格を有するベタイン化合物であるが、その構造単位にはDHのそれと重なる4-hydoroxyglutamateが含まれており、生合成上の関連性が示唆された.DBはマウスに対して、弱い興奮性の活性を示したことから中枢神経に何らかの作用があると推定されるが、詳しい薬理学的性質については現在検討中である。DHの詳しい構造活性相関に関しては今後さらに検討を加えていく予定である。
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