研究概要 |
商品先物価格の決定要因を探るための一つの試みとして,東京穀物商品取引所の米国産大豆先物価格とシカゴ商品取引所(CBOT)の大豆先物価格を対象にして,両者の間に共和分関係があるか否かを検討した。共和分関係の存在は,複数時系列間に長期的に均衡関係が存在していることを意味する。したがって,東穀とCBOTの大豆先物価格がある一定の関係を満たしながら変動していることを意味する。CBOTの規模を考慮すれば、CBOTの大豆先物価格が東穀の米国産大豆先物価格に影響していると考えられる。 両市場とも一日に複数限月が取り引きされているため,限月を時間差で並べた時系列データを作成した。東穀は1期先から6期先,CBOTは1期先から7期先の計13系列作成した。また,両市場の価格単位は異なるために為替レートの影響も考慮した。したがって,採用したデータは14系列である。 共和分分析は東穀とCBOTと為替レートの3系列に対して全ての期月の組み合わせについておこなった。その結果,東穀の期先系列とCBOTの期近系列の全ての組み合わせで共和分関係が認められ,その他の組み合わせについては、共和分関係が認められる組み合わせが少ない結果を得た。この共和分関係の存在が認められた時期は両市場共に出来高が多い時期である。したがって,出来高の多い期月は,CBOT大豆先物価格が東穀米国産大豆の先物価格の形成に影響を与えているといえる。 さらに,共和分関係が認められた組み合わせについて,主成分因子負荷量から共通確率トレンドの要因を明らかにした。その要因は市場で決まる価格に関係する要因と為替相場の変動に関係する要因の2つである。この2つの要因で,為替レートを介在させた東穀の大豆先物価格とCBOTの大豆先物価格の変動の多くを説明できることがわかった。
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