平成10年度において行われた研究活動は以下の通りである。 1. 食肉加工施設の訪問調査ならびに衛生管理の現状に関する考察 宮崎県で現在改修工事を実施している食肉加工処理施設を訪問し、その操業内容や衛生基準・品質保証の改善取組を調査した。と畜場レベルでの衛生検査の実施方法および衛生改善にフィードバックさせることの難しさについて具体的に検討した。昨年度の事例調査と今年度の調査から、わが国において枝肉、加工肉および精肉のトレーサビリティを確保することは極めて難しいことが明らかになった。その理由は第一に畜産業と食肉加工業とが垂直的衛生管理を実施できるような取引関係を構築できていないこと、第二に現在のと畜場および加工場の産業構造が極めて零細で投資余力を持たないためである。また枝肉・加工肉製造部門は、ハムなどの食肉加工品製造部門に比べて衛生管理が格段に難しく、現時点で理想的なHACCPを導入できる企業はほぼ存在しないのではないかという結論に至った。 2、 トレーサビリティ手法の研究とEUにおける遺伝子組み換え農産物の表示制度に関する資料収集 トレーサビリティ制度の分析をより深めるために、EUの遺伝子組み換え農産物・食品の表示問題について資料を収集した。ヨーロッパでは、食品が遺伝子組み換え体を含むかどうかを検証し表示する手法として、トレーサビリティが有効な手段の一つと考えられている。一部の研究者の間で遺伝子組み換え食品のトレーサビリティをいかに確立するかについて研究が始まりつつある。その動向を調査して論点の整理を行い、具体的な実証分析の適用可能性について検討した。
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