本年度も昨年度に引き続き愛知県と岐阜県にまたがる奥矢作地域を中心にして調査研究をおこなった。 福祉ボランティアネットワークをひとつの主題として研究を進めたが、介護保険制度の急速な制度化にともなって、ボランティアによる高齢者介護というよりも公的な高齢者介護システムの確立が過疎市町村において緊急の課題となっている。その対応状況は各自治体によってばらつきが大きいが、少なくとも福祉関連の就業機会が増加することは間違いなく、それが過疎地域における若者の新たなUターン場所となりつつある。福祉ボランティアの萌芽は40〜50歳代の女性を核とする場合が多かったが、若者の福祉事業への参入によって、全年齢階層的に広がる可能性をもったといえる。 また、高齢者福祉を考える場合、高齢音の日常的な家族生活を抜きにして考えることはできない。その意味で若年同居者の有無が重要となってくるのは当然である。九州中央部の一山村では、大規模な都市労働市場から離れているという地理的経済的条件もあるが、村をあげて第一次産業とくに林業を奨励し、豊かな森林資源を利用しながら、若年者の雇用機会を創出している事例がある。その村では椎茸栽培を奨励したことも関係して、針葉樹の植林だけでなくクヌギの植林もおこなわれており、山はモザイク状の景観を形成している。おそらくそれが原因どなって、近隣にみられるような農作物の獣害もみられず、結果として奥地での生活が維持され、後継者も定着している。 そうした村では公民館活動が活発で、住民相互の扶助ネットワークも密であった。すなわち人間と人間の関係が、実は人間と自然(この場合は森林)の関係と密接不可分であることが示唆された。
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