研究概要 |
本研究課題「実用的な地下ダム湖の管理運営手法の開発」を行うにあたり,地下水の貯留状況を迅速で正確に把握する手法の開発,地下水盆域の地盤物性値を同定する手法の確立,これらの遂行に必要な備品の導入・整備,などを今年度の主たる目的とした.このための設備備品として,デジタイザー式とそのデータ処理に用いるパーソナルコンピュータ型システムを導入した.本年度は研究の初年度であることから,このシステムのハード・ソフト両面の環境を整備した.ハードの面においては,デジタイザを通して節点座標データがコンピュータに取り込まれるような座標データ作成の支援システムを構築した.ソフトの面では,物性値同定に用いる有限要素法逆解析プログラムや地盤統計学に基づいた分布推定のプログラムを作成した.物性値の同定解析は,すでに当分野にて開発した平面地下水流動プログラムを基にして逆解析が行えるように改良を施して作成した.分布推定解析は,複数の統計モデルを準備して行うことから,客観的な視点に立って最適な統計モデルを選び出せる情報量統計学の考え方も取り入れたプログラムを作成した.本年度は,これらが完成した後に予備的な数値実験を行い,その動作確認を行うとともに,その有用性・実用性を検証した.その結果,予備実験に用いた仮想事例では,逆解析に成功した.また,地下水位の統計的推定は,地下水流動に関する物理モデルを一切介していないにもかかわらず,物理モデル解析に勝るとも劣らない結果が得られることを確認した.これは,解析に労力を必要としないことも考慮すると,実用的な推定であると結論付けられる.次年度においては,実地盤での地下水位分布や基盤高分布の推定を予定しており,現在それに向けて準備を行っている.
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