研究概要 |
平成9年度は,主に,統計的非線形圧密モデルの開発を行った.統計的非線形圧密モデルとは,一次元圧密における体積圧縮係数と透水係数の変化をモデル化し,さらに,その挙動の空間的な変動性を考慮したものである.すなわち,このモデルによって,体積圧縮係数,透水係数の任意の空間点における任意の応力状態の値を求めることができる. 今回は第一に,不攪乱試料の標準圧密試験結果を用いてモデルの構築を行い,モンテカルロシミュレーションによって,このモデルが現実的な実現値(realization)を与えることを確認した.次いで,このモデルを有限要素法圧密順解析に適用し,地盤の圧密沈下挙動の統計的性質を明らかにした.さらに,実測沈下量と解析沈下量の比較を行い,手法の有効性を確かめている.また,最終的な課題として,このモデルを,逆解析の事前情報として利用する手法について考察を進めつつある.逆解析モデルの有効性を検討するために,現場における計測値を用いるのが最善であるが,数や精度に限界がある.そこで,9年度は,カオリンを試料として用いて室内模型実験を実施し,現場計測値の代用とした.模型実験を行うべく,9年度は,ベロフラム型圧密試験装置を試作した.試験機はエアシリンダーによって連続載荷が可能であり,間隙水圧の測定が可能である.標準圧密試験結果からモデルを決定し,ベロフラムシリンダー圧密試験機から得た,時間-沈下曲線を用いて逆解析を試みた.その結果,沈下計測結果のみならず間隙水圧計測結果を用いた場合,本モデルによって沈下の将来予測が適切に行えることを確認した.
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