研究概要 |
本研究の最終目的は、接ぎ木苗生産システムの自動化を目指した中での安定でかつ生産性の高い順化システムを植物生理学的に有効な条件を満足したものとして構築することである。その順化装置においては最適な順化環境が植物生体情報を基として可制御であることを特徴とする。そのためには、接ぎ木における活着過程における生理反応の1つとして、穂木と台木間の癒合度を水の動態で同定することによって評価し、さらに、その計測システムを構築する。そこでは、生理反応系と水の動態との関係や、水の動態と可計測性について明確にする必要があり、さらに、その最適状態を決定するための理論と、目標値決定後の環境制御システムの構築が必要となり、その実用化を含めた技術において工学的な原理の確立が必要となり、これらについても明確にしていくことが本研究で取り扱う目的である。 本年度は,初年度であるため,接ぎ木の活着過程における穂木と台木間の癒合度を両者間の水の動態で評価できることを検証するための実験を行い、水の動態を非侵襲的に計測する方法を確立させることについて検討した。ここでは、特に、穂木と台木の水の動態を調べるため色素を使った吸い上げ試験を行い、穂木と台木の茎軸とその接合部の各位置における横断面を切断し、実体顕微鏡を用いて観察し、その吸い上げ能力を確認するとともに、一定の物理環境(光・温度・湿度・風)が調節された庫内に植物を置き、分解能が高い電子天秤を用いてその植物の重量変化と吸い残した水量を計測し、接ぎ木苗からの蒸散量について物理的モデルを用いて推定する。そして、このモデルの有効性を検証した結果、有効であることが明らかとなった。 次年度は、植物体内水分を非破壊・非接触・非侵襲的に計測する方法について検討し、水の動態と接ぎ木苗の生理反応との関係について調べる予定である。
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