有人宇宙活動を支える閉鎖生態系生命維持システム(CELSS)の構築にとって、動植物に由来する廃棄物処理システムはその根幹を成す物である。特に初期の閉鎖系では、動物への主たる食糧は植物体から供給されることが予定されており、人間の生命活動に基づく植物体からの廃棄物負荷量を算定することは必要不可欠である。そこで、閉鎖系栽培候補7植物について、閉鎖環境を模擬し、栽培実験を行ったところ、イネ、ダイズ、ソバ、ゴマの非可食部量は59%、61%、64%、73%であり、トマト、ジャガイモ、コマツナは34%、17%、38%という結果が得られた。これを見ると、穀類関係では非可食部の割合が高く、果菜、葉菜類ではその値が低いことが明らかになった。いま、この結果を成人一日当たりのエネルギー摂取量をまかなうことを基本として植物体摂取量を試算したところ、可食部重1に対し、その1.6倍もの非可食部量が排出され廃棄物処理システムの大きな負荷になることが推察された。また、植物体非可食部の14元素の元素含有量を分析したところ、一例としてイネの非可食部では、多量含有元素以外では想像以上にNaとClの含有量が高く、さらにイネ特有のSiの濃度が高いことが明らかとなった。これらのことにより、植物体を主たる食糧源とした場合の廃棄物の物質量的な負荷量が明らかになるとともに、これから廃棄物処理を行うための元素レベルの負荷量も算定可能になった。今後は、実際の廃棄物処理過程での物質循環を明らかにすべく研究を進めていく予定である。
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