研究概要 |
(1)遺伝資源の導入,育種過程のボトルネック効果による遺伝的多様性の変化を解析するために,海外導入品種を育種母材として育成されたペレニアルライグラス合成品種「ヤツボク」の合成1代,2代,3代および母材品種を入手し,現在育成中である。また,ペレニアルライグラスエコタイプの収集の一つとして,日本国内の市街地に自生するエコタイプを種子で採取し,フローサイトメーターにより倍数性を調査した。その結果,静岡市内で収集したエコタイプは全て2倍体であったことから,静岡県以外のエコタイプについても解析中である。 (2)RAPD分析の基礎として,DNAの抽出方法について検討した。個体ごとにDNAを抽出する方法に加えて,集団ごとに複数の個体をまとめて抽出するバルク抽出を試み,PCRによって増幅されるDNA断片について比較した。その結果,バルク抽出で得られたサンプルでは,集団内の遺伝子頻度を反映しつつ,増幅されるDNA断片数が減少した。したがって,集団間の比較にはバルク抽出が有効なDNA抽出法であると考えられた。 (3)ペレニアルライグラスに関する環境適応性の評価の一つとして,耐凍性の簡昜検定法を検討した。耐凍性を評価するためには,植物体を凍結処理する前に低温順化によって耐凍性を十分に向上させてから,品種・系統間差異を検出する必要がある。低温順化を低温恒温室で行った場合,十分な耐凍性が得られず,品種・系統間差異を検出することができなかった。そこで,山梨県酪農試験場において,冬の圃場環境下で低温順化を行い,耐凍性の評価を進行中である。
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