本研究では、乳酸菌の利用により食肉製品の品質向上を目指すことを目的とした。この目的のために、食肉製品の色調を制御する機能(ニトロソミオグロビン形成能)を有するLactobacillus fermentum JCM1173と、有害細菌に対して顕著な抗菌活性を示すLactobacillus salivarius T140の2株を用い、(1)食肉環境における機能発現の指摘条件の検索、(2)分子生物学的手法による有効機能の安定・向上、(3)食肉製品における効果的利用方法の設定をすることとした。本年度は特に(1)と(2)について検討を行った。その結果、以下の知見を得ることができた。 食肉の色調制御機能や抗菌活性が効果的に発現する条件(気相、温度、pH、塩類・糖類濃度など)が存在することをモデル系において明らかにし、これらの乳酸菌株を食肉製品に利用する際に考慮すべき条件に関する基礎的なデータを得た。また、Lactobacillus fermentum JCM1173を用いてエレクトロポレーション法による遺伝子導入(形質転換)の至適条件の設定を試み、この菌株の分子生物学的手法による改良法の確立に関する糸口を見いだした。さらに、2菌株を親株としてランダムミューテーション法を実施することにより、ニトロソミオグロビン形成能や抗菌活性を向上させた変異株を作出することにも成功し、食肉製品のスターター乳酸菌として用いる菌株としてより適するものが得られた。本研究で得られた一連の成果は、乳酸菌による食肉製品の品質向上技術の確立に寄与するデータとして今後、活用されることが期待できる。
|