研究概要 |
今年度は、1)ウマ骨格筋衛星細胞の単離と培養系の確立、2)ラット骨格再生モデルを用いた、c-ski遺伝子の発現誘導、3)ウマc-ski遺伝の塩基配列の決定、の3点について研究を行った。1)では、ウマ後肢骨格筋である、ひらめ筋より、酵素処理により筋衛星細胞を単離し、in vitro培養系において、筋管細胞にまで、分化、成熟させることに成功した(Soeta et al.,投稿準備中)。さらに、その過程で、筋細胞のマーカーとして用いたデスミンタンパク質が、in vitroにおける筋細胞同士の融合時に、その融合面に局在化すること、また、マウス筋衛星細胞を比較対照とした場合、ウマ筋細胞におけるデスミンタンパク質の局在化が、より顕著であることを見いだした。このことは、骨格筋線維の中間径フィラメントであるデスミンタンパク質が、筋細胞の融合にも関与していることを示唆する重要な知見である。2)では、従来、骨格筋の発生過程でのみ、その役割が注目されてきたc-ski遺伝子が、成体骨格筋の再生時に、発現誘導されてくること、さらに、再生過程で増殖する筋衛星細胞に局在していることを発見した。また、c-ski遺伝子は、筋衛星細胞の増殖のみならず、分化にも深く関与していることを示唆する結果も得られた(Soeta et al.,投稿準備中)。3)では、すでにクローニングがほぼ終了しているウマc-ski遺伝子(cDNA)の塩基配列の決定を行い、本遺伝子がウマの各種組織で発現していることを示した。また、ウマ胎子骨格筋と成体骨格筋での発現量の比較を行った結果、胎子期の骨格筋での発現が高いことがわかった(Yamanouchi et al.,投稿準備中)。今後は、ウマを含む家畜骨格筋衛星細胞の株化を試みる一方、骨格筋の再生過程におけるc-ski遺伝子の役割についての詳細な解析や、骨格筋特異的に発現するc-ski遺伝子のホモログの探索などを中心に研究を展開していく予定である。
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