動物の成長に不可欠な成長ホルモンのメディエーターと考えられているインシュリン様増殖因子-I(IGF-I)は、そのほとんどが血中において IGF 結合蛋白質(IGFBP)と呼ばれる蛋白質と結合しており、IGFBP は IGF と結合することによりその働きを制御していると考えられている。ニワトリの血中 IGF-I濃度は、栄養条件の違いにより変化することが明らかとなっているが、ニワトリの IGFBP と栄養の間の関係については不明な点が多い。平成9年度では、栄養条件の違い、特に絶食再給餌がニワトリの IGFBP-2 の遺伝子発現および血中 IGF-I 濃度にどの様な影響をおよぼすか調査することを目的とした。方法としては、2日間絶食させたニワトリに通常飼料を自由摂取させ、再給餌1、2、6および24時間後に血漿、脳、筋胃、肝臓、小腸および腎臓を採取した。血漿中の IGF-I 濃度をラジオイムノアッセイにより測定し、組織中の IGFBP-2 mRNA 量をノーザンハイブリダイゼーション法により測定した。血漿中の IGF-I 濃度は、2日間の絶食により有意に減少し、通常飼料の再給餌後24時間以内では変化は認められなかった。脳における IGFBP-2 mRNA 量は、2日間の絶食により減少し通常飼料を再給餌することにより緩やかに増加していった。筋胃および肝臓における IGFBP-2 mRNA 量は、2日間の絶食により増加し、再給餌6時間後に自由摂取群のレベルまで減少した。腎臓における IGFBP-2 mRNA 量は、絶食再給餌により変動せず、小腸では IGFBP-2mRNA は検出されなかった。以上の結果より、絶食再給餌による IGFBP-2mRNA 量の変化には組織特異性があり、血中 IGF-1 とは独立して制御されている可能性が示唆された。
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