研究概要 |
本研究は,体外成熟ブタ卵を直流パルス法で活性化させ,表層顆粒の開裂と透明帯反応を個々の卵で観察すると共に,両現象に対する細胞外および細胞内Ca^<2+>除去の影響をCa^<2+>キレート剤(EGTA,BAPTA-AM)を用いて検討した。尚,表層顆粒の変化は10μg/ml FITC標識AHG-Lectinで染色後,共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。一方,透明帯反応に伴う透明帯糖タンパク質の変化は,替え刃で透明帯の一部に切れ目を入れた後,卵細胞質を完全に除去した個々の透明帯にNHS-LC-Biotin II処理を施し,SDS-PAGEで泳働した後,ECL法でバンドの移動度を観察することで検討した。さらに,両結果を画像解析ソフトによりそれぞれ数値化することで,表層顆粒の開裂および透明帯反応の進行度合を明らかにした。 活性化刺激により,活性化卵においては表層顆粒の開裂に伴うFITC蛍光光度の顕著な減少が観察された。しかし,EGTA区の47%卵が,またBAPTA区の43%卵が,それぞれ成熟卵と同じ蛍光光度を示した。また,ブタ卵では活性化に伴い透明帯を構成する糖タンパク質の内,ZP1(82kDa)量が著しく減少することが明らかとなった。このことは,これまでマウス卵で報告されているZP2からZP2fへの変化とは異なった結果であり,ブタ卵の透明帯反応に伴う糖タンパク質の変化においてマウス卵との相違が確認された。さらに,この透明帯反応に伴うZP1の減少は,EGTA区とBAPTA区で有意に抑制された。 以上の結果から,透明帯反応に伴う透明帯糖タンパク質の変化が一個の卵子を用いてECL法により解析できることが明確にされた。また,ブタ卵の活性化に伴う表層顆粒の開裂および透明帯反応には細胞外ならびに細胞内の両Ca^<2+>が密接に関与していることが明らかとなった。
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