卵胞・卵管および子宮液中に含まれる蛋白質の多くは血液(血清)由来であり、また肝臓は血液成分の主要な産生臓器である。更に、癌細胞株は未知の成長因子を産生している可能性がある。そこで、これらの性質を兼ね備えた肝癌細胞株に着目し、培養液中に分泌される初期胚発生促進因子を探索した。平成9年度では、ラット肝癌由来Reuber-H35細胞の無血清培養上清中に、マウス2細胞期卵の発育促進活性が存在することを明らかにした。一方、ラット肝癌由来BU胞培養上清はウシ体外受精卵の体外発育に有効であることが既に報告されている。そこで本年度は、マウス体内受精卵およびウシ体外受精卵の体外発育に対する、Reuber H-35およびBRL細胞培養上清の効果を比較した。得られた知見は以下の通りである。 1. マウス1細胞期卵の体外発育に対し、Reuber H-35およびBRL細胞培養上清は2細胞期特異的にその細胞分裂を抑制した。またその活性は、分子量1万以下画分に存在すること、Reuber H-35細胞培養上清の方が抑制活性が強いことを見出した。 2. マウス2細胞期卵の体外発育に対し、Reuber H-35およびBRL細胞培養上清は発育促進活性を示した。またその活性は、Reuber H-35細胞培養上清の方が強いことを見出した。 3. ウシ体外受精卵の体外発育に対し、Reuber H-35細胞培養上清は早期細胞死を抑制した。しかし、BRL細胞培養上清には、その活性は認められなかった。
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