研究概要 |
Kimらによって報告された(Kim,N.W.et al.1994,Science 266,2011-2015)TRAP(Telomeric-repeatamplification protocol)法はPCR法を応用した簡便かつ高感度なテロメラーゼ活性検出法として現在広く用いられている方法である。トリパノソーマ原虫のテロメア反復配列は人と同じ(GGGTTA)_nであることから,人テロメラーゼ活性検出用に米国Oncor社より市販されているTRAPEZE^<TM> Telomerase Detection Kitを用いてトリパノソーマ原虫のテロメラーゼ活性が検出できるかどうかについて検討した.Trypanosoma brucei gambiense IL2343株の血流型虫体をマウスに感染し,抹消血液中の原中数が高値を示した時点で100U/mlのヘパリン処理を施した注射器を用いて心臓採血した.感染血液を等量のグリコース含有リン酸緩衝液(pH7.8)と混合し,DE-52陰イオン交換カラムを用いて原虫を精製した.精製虫体を10^6ずつ分注し,キットに添付されているCHAPS細胞溶解緩衝液にて処理してトリパノソーマ抽出液とした.陽性細胞コントロール・トリパノソーマ抽出液および陰性コントロールをサンプルとして,30℃,30分間テロメラーゼ伸張反応を行った後,連続してPCRを行った.結果,陽性細胞コントロールでは高いテロメラーゼ活性が検出されたが,トリパノソーマ抽出液からはテロメラーゼ活性が検出されなかった.活性が検出されなかった理由として,反応系の諸条件が人テロメラーゼで最適化されていたことが考えられたので,現在反応に用いる原虫数・テロメラーゼ反応の反応条件(時間・温度)・PCRの反応条件(時間・温度およびサイクル数)について検討しているところである。
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