研究概要 |
ウシの皮下、腹腔内および筋肉内の各脂肪組織の生化学的性質の違いを遺伝子発現の面から検討することを目的として、まず脂肪細胞分化に関与する因子のクローニングを行った。レチノイン酸は脂肪細胞分化を抑制することが知られている。そこで、レチノイン酸の作用を仲介するレチノイン酸レセプターのクローニングを行った。レチノイン酸レセプターにはRARα,β,γ、RXRα,β,γの計6種類の遺伝子が報告されている。これらの多くが肝臓で発現していることから、ウシ肝臓よりcDNAライブラリーを作製しRT-PCRにより増幅したマウスPARγおよびRXRαをプローブとしてスクリーニングを行った。また、これと同時にウシ脂肪組織cDNAライブラリーについてもスクリーニングを行った。その結果、脂肪組織cDNAライブラリーからRXRγクローンが単離された。今後ウシRXRγの全塩基配列を決定するとともに、この他の5種類のレセプターのクローニングを進める必要がある。 既にクローニングしている脂肪細胞分化を促進する核内レセプターPPARγについて、5'RACE法により5'末端領域の配列が異なるアイソフォームのクローニングを行ったところ、5種類のcDNAが得られた。マウスやヒトではγ1とγ2の2種類のアイソフォームのみが報告されているだけであり、今回得られた5種類のアイソフォームがウシに特異的なものであるかどうか検討が必要である。またこれらのアイソフォームの発言の組織特異性についてもRT-PCRにより検討を行ったが、それぞれのアイソフォームを明確に区別することができておらず、PCRに用いるプライマーの配列を含めさらに検討が必要である。 脂肪細胞分化を制御する因子のクローニングは順調に進んでいる。また、いくつかの遺伝子については既にDNA配列のデータベースに登録されている。今後、これらの塩基配列を基にPCRプライマーを設定し、定量的なRT-PCR法によりウシの皮下、腹腔内および筋肉内の各脂肪組織での遺伝子発現の相違を検討していく。
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