研究概要 |
本研究では、ウシの皮下、腹腔内および筋肉内の各肪組織の生化学的性質の違いを遺伝子発現の面から検討すること、これらの脂肪組織の形成に対するビタミンA作用の違いを明らかにすることを目的として、脂肪細胞分化に関与する因子のクローニングとその発現の半定量的解析を行った。まず、ビタミンA(レチノイン酸)の作用を仲介するレチノイン酸レセブター(RARα,β,γ,RXRoα,β,γの計6種類)のクローニングを行った。昨年既にウシ脂肪組織cDNAライブラリーよりRXRγを単離しているが、今年度は脂肪および肝臓より精製したRNAを用い、RT-PCR法により残りの5種類についてクローニングを行った。その結果、いずれも部分長ながら5種類全てについてcDNAが単離された。単離された6種のウシRAR・RXRはヒトやマウスのものアミノ酸配列においてと95%以上の高い相同性を示した。現在全長のcDNAのクローニングを続けている。 また、脂肪細胞分化を促進する転写因子であり、RXRとヘテロ二量体を形成して機能することが知られているPPARγについて、ウシにおいて5'末端の配列のみが異なる3種類のアイソフォーム(γ1a,γ1b,γ2)が存在することを明らかにした。この3種のアイソフォームをモデルとしてRT-PCRを利用した半定量的な遺伝子の発現量の解析法について検討した。濃度既知のそれぞれのアイソフォームcDNAを鋳型として検量線を作製しPCR産物を定量した結果、腎周囲脂肪ではγ1aとγ1bが同程度に、γ2がその6割程度発現していることを明らかにした。
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