研究概要 |
哺乳類の雄性生殖細胞(精母細胞以降)は直接熱に対して感受性をもつが、このような精細胞の温度感受性に関する分子レベルのメカニズムは明らかになっていない。申請者は高分子量型の熱ショック蛋白の一種HSP90が減数分裂前精細胞に高発現しているが、減数分裂後の精細胞では減弱することを報告した(Ohsako et al.,J Histochem Cytochem,1995,67-76)。HSP90は近年転写因子特異的分子シャペロンとして注目されている。すなわち、このシャペロンの充分量の発現がないと,ある種の転写因子が機能しないことが示されている。したがって,減数分裂後の精細胞では高温暴露でコンフォーメーション変化をうけた分化に必須の転写因子が、このシャペロン機能により再賦活化されないまま放置される可能性がある。本研究ではHSP90が精細胞特異遺伝子の発現調整にどのように関与しているか検討するため,独自の無細胞in vitro転写系を確立することをスタートポイントとした。 本年度は予備的実験として,In vivo高温暴露によってHSP90の発現に変化があるか検討した。少なくとも非放射線系では37℃43℃ともにマウス精巣では発現パターンに変化は見られなかった。しかし,今回のアッセイ法では感度に問題があるため,現在[35S]Met投与によるラベル実験を行っている。 また,無細胞in vitro転写系に関しては,mouse calnexin-t遺伝子,mouse protamine-2遺伝子の調節領域をPCR法により回収し,pBluescriptにサブクローン化するところまで完了した。Luciferase cDNA fragmentへのリンク,マウス精巣から核抽出液を調整等現在進行中である。
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