研究概要 |
ラット卵巣におけるcPLA_2のmRNAと蛋白質の発現をそれぞれRT-PCR法と免疫組織化学法により検出した。まず始めに、cPLA_2cDNAの一部(+304〜+1199,896bp)が増幅されるようにプライマーを設計し、40サイクル数のPCRを行った。その結果、脾臓や腎臓と同様に卵巣総RNAから約900bpのDNA断片が増幅され、卵巣におけるcPLA_2遺伝子の発現を確認した。また対照として用いたG3PDH(30サイクル数)と比べ、その発現量の極端に低いことが示唆された。今後定量的PCR法を確立し、形態的にも機能的にもダイナミックに変化する卵巣でのcPLA_2発現調節機序について検討する予定である。 続いて、抗ヒトcPLA_2抗体(米国Genetics Institutesより供与)を用いて、cPLA_2の細胞分布を検索した。検索は常法の、パラフィン包埋/酵素抗体法により行なった。免疫陽性反応は、発育卵胞においては卵子と排卵直前の顆粒層細胞、黄体においては形成直後から観察された。面白いことに退行過程の黄体や閉鎖卵胞に顕著な陽性反応が認められた。我々の成績は、cPLA_2が広範な卵巣細胞種に局在し、かつその細胞の生理的状態に関連してその量が変動する可能性を示した。すなわちこれまでEの関与が指摘されていた排卵時期の卵胞と黄体におけるcPLA_2の局在を実証したばかりでなく、卵子、閉鎖卵胞、形態的退行過程の黄体(白体)に豊富に存在することを観察した。このことは卵子の成熟過程や卵巣のアポトーシスにおいて、cPLA_2が関与する可能性を示しており、興味深い基礎知見といえる。
|