研究概要 |
ラット卵巣の排卵過程における細胞質型PLA2(cPLA2)の発現と役割を検討した。26日齢のラットに性腺刺激ホルモンであるPMSGを、その48時間後にhCGを投与して誘起排卵モデルを作出した。この卵巣では、cPLA2に対する強い免疫組織化学的反応が卵子に観察され、PMSG投与で卵胞膜細胞に、hCG投与で顆粒層細胞に免疫反応が認められるようになった。卵巣サイトゾルのPLA2活性を測定すると、PMSG投与により若干増加するものの、hCG投与後8時間までは低く推移し、以後黄体形成と共に上昇して行った。cPLA2の特異的阻害薬であるarachidonyl trifluoromehtyl ketone(ATK)の添加実験により、この活性の約70%はcPLA2に由来することが強く示唆された。次にhCG投与の8時間後の卵巣嚢内にATK(0.3,1.0,3.0mg)を投与した時の排卵数と卵巣内PG含量に対する効果を検討した。その結果、排卵数は用量依存的に減少し、同量の全身性投与では効果がなかった。卵巣PGE2レベルも有意に半減していた。以上の成績より、ラットの排卵卵胞において、cPLA2が発現し、顕著な活性増加は示さないものの、卵胞のPG産生と引いては排卵過程に寄与していることが示された。 さらに、妊娠ラットの黄体PLA2活性を測定したところ、機能的退行時に急激な活性増加と分娩後数日は活性が高く維持され、形態的退行と共に低下して行った。産仔の吸乳刺激を無くした場合、PLA2活性の推移が変化して黄体退縮も抑制された。この黄体PLA2活性は、薬理学的・免疫化学的検討により、数種類のイソ酵素に由来するらしいことが示唆された。
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