研究概要 |
本研究では,複雑なゲノム間の変異を迅速に検出するために,制限酵素の認識・非認識を利用してアンプリコン(PCRによって増幅されたゲノムDNAの一部)を作製し,これを電気泳動展関,非RI的視覚化によりゲノムプロファイルを作成するゲノムスキャニング法を考案し,検討した. 1.大腸菌ゲノム まず,モデル生物として大腸薗を用い,本法の有用性,再現性,ならびに検出座位のクローニングについて検討した.大腸菌DH5αおよびINVαF'のゲノムDNAを供試材料に,制限酵素Bgl IIとEag Iの二重消化によりアンプリコンを作製し,一次元展開によりゲノムプロファイルを作成した.その結果,それぞれ約50座位が検出され,とのうち1座位に変異が認められた.また,検出された総DNA断片長より大腸菌ゲノム全体の約100分の1相当を検索しているものと考えられた.さらに,変異座位をクローニングし,塩基配列を解析した結果,大腸菌Fプラスミド由来のPifA遺伝子の上流域の塩基配列と完全に一致していることが明らかとなった. 2.ウズラゲノム 次に,高等生物ゲノムのCpGアイランドにおけるメチル化・脱メチル化を標的として組織特異的な遺伝子変化の解析を試みた.ニホンウズラの腎臓および精巣のゲノムDNAを供試材料に,メチル化感受性制限酵素Eag I消化によりアンプリコンを作製し,制限酵素Mbo Iにて二次元展開してゲノムプロファイルを作成した.その結果,それぞれ約300スポットが検出され,このうち6スポットに変異が認められ,組織特異的に変化している遺伝子の一部である可能性が示唆された.また,検出された総DNA断片長より本法では一工程において高等生物のゲノムの約1万分の1相当を検索できるものと考えられた.
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