研究概要 |
本年度は、糞便内抗原検出法の有用性を検討する目的で、ビ-グル犬への多包条虫感染実験を行い、現法を用いて糞便内抗原の排出動態を観察した。糞便内抗原は感染後3日目より陽転し、イヌにおいて早期診断が可能であることが示された。また、再感染の影響を調べるために初感染群と再感染群における糞便内抗原の排出動態を比較したところ、再感染群において糞便内抗原排出のピークの低下および排出量の減少(虫体脱落)速度の亢進が見られ、糞便内抗原検出法を用いて抗原排出量の動態を比較することにより感染群間における時間的な比較検討が可能となることが示された。 現法で検出される抗原を生化学的手法を用いて検討した結果、過ヨウ素酸の糖分解処理によって分解されることから検出抗原は糖であることがわかり、そのため、親水性であり、ホルマリンなどの保存液に安定であり、さらに加熱および冷却に対しても安定であることがわかった。アルカリによる糖鎖の切断処理およびレクチンブロット法による抗原解析から検出抗原が複合糖鎖の形で存在し、Man、Glu、GlcNAcから構成されていることがわかった。 現法の改良を目的に作成している多包条虫の排泄・分泌抗原に対する新しいモノクローナル抗原はスクリーニング過程にあり,これまでに8種類のハイブリドーマを分離、凍結保存した。来年度は、これらのハイブリドーマから作り出されるモノクローナル抗体の多包条虫に対する特異性等の詳細な検討を行い、診断法へ適用する。
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