インフルエンザA型ウイルスNAに存在するN-結合型糖鎖の付加及び修飾がNAの成熟、膜輸送にどのような役割を果たしているかを糖鎖合成阻害剤ツニカマイシン(TM)を用いて検討した。 1.ウイルス感染細胞を糖鎖合成阻害剤TMによって処理し、蛍光抗体法によって解析したところ、糖鎖が付加されていないNAはNAの高次構造依存性の単クローン性抗体とは反応するが、多量体形成は行われないことが明らかになった。TM処理のNAの細胞膜表面への輸送に対する影響をフローサイトメトリーによって解析したところ細胞膜表面の蛍光強度が非処理時の5%以下に低下していることが明らかになった。このことから、TM処理によって多量体形成を阻害されたNAは、細胞表面には輸送されないことが判明した。また、蛍光抗体法による観察によって、糖鎖の付加されていないNAは宿主細胞内において急速に分解されていることが示唆された。 2.糖鎖の付加されていないNAの宿主細胞内での分解に関与する宿主細胞側の因子を解明するため、TM処理したウイルス感染細胞を種々のプロテアーゼ阻害剤で処理して、細胞内NAへの影響を観察した。その結果、細胞内NAの分解がシステインプロテアーゼ阻害剤TLCKによって若干阻害されることが明らかになった。これらのことから、インフルエンザウイルスNAの高次構造の形性には、糖鎖の付加が不可欠であること、及び高じ構造形成に失敗したNAの宿主細胞内での分解にシステイプロテアーゼが関与している可能性が示唆された。
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