研究概要 |
生体が、感染、炎症、ストレス等による侵襲を受けると、肝臓から血液中に特定の一群の生体防御関連タンパク質、すなわち急性相タンパク質が分泌される。この研究の目的は、急性相タンパク質の測定による動物の健康管理を新規家畜や野生動物に応用することにより、基礎研究及び関連産業の発展への貢献をはかることである。本研究では、クマおよびシカの急性相タンパク質に焦点をあてて、免疫測定法を確立するとともに飼育個体や野生個体における変動を解析して,これらの新規家畜や野生動物の健康管理に利用することを計画した。研究計画は,急性相タンパク質測定法の確立,試料の収集と測定の実施,総合評価からなるが,平成9年度は,測定法の確立を中心に以下のごとく検討した. クマの急性相タンパク質測定法の確立:登別クマ牧場(北海道)で飼育されている成獣ヒグマから血液を採取して血清を分離し,ハプトグロビンを精製した.精製ハプトグロビンは,純度95%以上であった.精製ハプトグロビンをウサギの免疫して抗体を作製し,単純放射免疫拡散法(SRID法)およびウエスタンブロット法による測定法を確立した.その他の急性相タンパク質については,市販の抗ヒトタンパク質抗体を利用してウエスタンブロット法で測定可能かどうかを検討したところ,α2-マクログロブリン,α1-アンチトリプシンおよびC-反応性タンパク質については,それぞれクマとの交差反応性を認めたが,血清アミロイドAプロテインについては交差反応性を認められなかった. シカの急性相タンパク質測定法の確立:ハイジ牧場(北海道)で飼育されているエゾシカから,上記のクマの例にならってハプトグロビンを分離した.シカにおける測定法の確立については,他のシカ急性相タンパク質のものを含めて現在検討中であり,来年度も続けて実施して行く計画である.
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