本研究では、加工残滓廃棄物から可食組織を分離することを目的とした。この目的を達成するためには、試料の微粉末化による組織の分離方法を技術的に確立し、さらに、この分離方法のメカニズムを定量的に明かにする必要がある。そこで本研究では、食品産業において発生する加工残滓廃棄物のモデルとして魚の頭部を用い、可食部分を分離・回収することを目指した。分離・回収の手段として、凍結粉砕時の優先粉砕を検討することにした。優先粉砕とは、目的成分のみが、優先的に粉砕され微粒子となり、他の成分は比較的大きな粒子となる粉砕のことを指す。優先粉砕が可能な試料では、粉砕物を分級することにより、目的成分を分離することができる。報告者の既住の研究から、試料の凍結粉砕温度を適切に設定することにより、生体材料においても優先粉砕が可能であることが明かとなっている。 まず始めに、低温恒温槽(-150℃〜-20℃)を用いて試料(魚の頭部全体、頭部より分離した骨格組織および筋肉組織)の凍結を行なった。次に、試料の凍結温度と同一温度において、試料の粉砕を行ない、得られた粉砕物を-50℃の低温実験室内で、標準ふるいを用いて、粒子径ごとに分級した。粉砕後の試料は、各組織の脂肪含有量などの被粉砕物の一般組成に応じた特有の粒子径に粉砕されていることが予想されていたので、粉砕試料の一般組成(脂質含有量、蛋白質含有量、水分、灰分など)を粒子径ごとに測定した。また、骨格組織と筋肉組織の材料力学物性(引っ張り破壊応力、圧縮破壊応力、ヤング率など)を-150℃〜-20℃で測定し、Bondの粉砕理論を用いて、優先粉砕現象のメカニズムを解析した。同時に、試料中の各組織が優先粉砕される条件(凍結粉砕温度など)を明らかにした。さらに、この優先粉砕現象を利用して、試料から可食部分の分離・回収を試み、その回収率の評価を行なった。
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