粘液細菌の一種であるMyxococcus xanthusは、飢餓条件下で集合体並びに胞子からなる子実体を形成する。我々はTransposonV(TnV)を用いて、集合体は形成するが胞子を形成しない変異株を作製した。この変異株は、propionyl-CoAをmethylmalonyl-CoAに炭酸付加するpropionyl-CoA carboxylaseのβ-subunit遺伝子中にTnVが挿入されていることが明らかになった。このpropionyl-CoA corboxylaseβ-subunit遺伝子の全塩基配列を決定したところ、humanやratのそれと高いホモロジーが見られた。また、propionyl-CoA carboxylase活性を測定すると親株において活性は認められるものの、変異株では活性が認められなかった。 この変異株の分化時にmethylmalonyl-CoAを添加することにより、この変異株は胞子形成能を回復させた。また、この変異株の細胞膜中の脂肪酸組成は、親株に比べ、長鎖の脂肪酸(C16-C18)の割合が約35%減少していた。このことから、M.xanthusにおける分化時のpropionyl-CoA carboxylaseの役割は、脂肪酸合成の伸長に関わるmethylmalonyl-CoA及びmalonyl-CoAを生産し、長鎖脂肪酸の合成やpolyketideの合成に関与していることが推定された。
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