研究概要 |
本研究は、肢芽のパターン形成を解明するため,実験発生学的研究と肉眼解剖学の蓄積に基づく形態学的研究とを融合し,「パターンの変化」の形態学的評価を軟骨の形態ばかりでなく筋にまで広げ,明確にすることを目的としている. 今年度は,研究の前半として、ニワトリ成鳥を用いて,翼の筋の解剖をおこない,筋ならびにその支配神経の正確な理解につとめた.また、ニワトリ10日胚の翼芽の連続切片を作製することによって実験でもちいられる筋の形,位置を把握するとともに,実験のためのコントロールを作製した。それらのデータをもとに,ニワトリWingless(Japanese wingless Mutant ; Kondo,1961)の成体の解剖をおこない、その腕神経叢の構成についての調査をおこない、AERが発生初期に消失したときにおこる翼の欠如とそれにともなう筋の形態の変化について報告した(平成9年解剖学会関東地方会)。それによって、発生初期に決定された近位の肢の背腹のパターンは、停止部位の欠如などにもかかわらず、成体にまで安定的に保持されているということがわかった。さらに、重複肢、両背側肢などを実験的に作製し、それらの筋の構成についての基礎的データの収集をおこなったところである。 また、ニワトリおよびウズラの筋原細胞の培養をおこない、培養細胞を安定的に得るための予備的な実験をおこなったところである。 これらの基礎的実験的データをもとにして、肢芽の形態形成における筋の分化について、平成10年度に実験を行う予定である。
|