変異ダイナミン遺伝子導入細胞を用いたエンドサイトーシスの研究の過程で、ダイナミン機能障害細胞が培養ディッシュ上に広く細胞質をのばして進展、接着することを見いだした。本研究ではその研究結果を踏まえて、エンドサイトーシスが細胞接着に及ぼす影響を検討し、以下の結果を得た。 1. 温度感受性変異ダイナミン導入細胞のエンドサイトーシス能の検討:温度感受性変異ダイナミン(ts)および野生型(wt)ダイナミン導入細胞へのトランスフェリンのエンドサイトーシスを検討した。さらに、エンドサイトーシス阻害時の形態変化を検討するため電顕的観察を行った。その結果、トランスフェリンのエンドサイトーシスは非許容温度下において完全にブロックされ、電顕的には細胞膜直下にクラスリン被覆小窩および異常に深い細胞膜陥凹構造が集積していた。 2. ts変異サイナミン導入細胞におけるインテグリンのエンドサイトーシスの検討:ts細胞とwt細胞を用いてインテグリンとトランスフェリンのエンドサイトーシスを観察した。その結果、ts細胞ではインテグリンのエンドサイトーシスが著しく阻害されていた。 3. ts変異ダイナミン導入細胞のファイブロネクチン上での付着・伸展性の検討:浮遊させた細胞をファイブロネクチン処理ディッシュに加え、細胞付着・伸展性を経時的に観察した。その結果、細胞質を伸展させている細胞は10分後までみられなかった。その後、細胞質を伸展させている細胞の割合は増加していったが、細胞伸展性、細胞形態ともに、wt細胞とts細胞の間に違いは見られなかった。以上の結果より、インテグリンのエンドサイトーシスの障害は、接着・伸展過程のごく初期には影響が少ないことが示唆された。今後は他の基質への接着性を検討していきたい。
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