ラット精細管細胞外マトリックス(以下ST-ECM)成分を生化学的に分析し、ここから新しいECM成分を同定し、これが精巣機能にどの様な影響を及ぼすのかを解明するために実験を進めている。現在私たちはST-ECMを単離し、この8モル尿素溶液可溶化分画を二次元電気泳動によって、分子量2〜20万の範囲で20以上のECM成分に分離している。子の内分子量約18万、pl5.0タンパクを回収し、アミノ酸シークエンスを行なった結果、このタンパクがIV型コラーゲンα5鎖(ヒト)とホモロジーがあることを確認した。現在IV型コラーゲンのα鎖は、α1〜6までの6種類が報告されている。しかし、IV型コラーゲンのα鎖がなぜ6種類も必要なのか、6種類あれば理論的に56通りのα鎖の組み合わせが考えられるが数種類の組み合わせしか報告されていない、さらにα鎖の組み合わせがはたして基底膜の組織特異性等に関与しているか否かなどは殆んど解明されていない。IV型コラーゲンα5鎖(ヒト)は、アルポート症候群の研究によって発見された比較的新しいα鎖である(Hostikka et al.1990;Barker et al.1990;Tryggvason et al.1993)。さらにIV型コラーゲンα5鎖(ヒト)は遺伝子工学的な研究が先行して行なわれているために、タンパクレベルの知見、また実験動物における知見も究めて少ないのが現状である。既知のタンパクではあるが、私たちは今後ST-ECMの新タンパクを検索するのと並行して、IV型コラーゲンα5鎖が精巣機能にどの様に関与しているのかはタンパクレベルで解明していく予定である。一方私たちは精細管基底層(testicular lamina propria)のECM構成層を5層であると定義し、今までには存在が確認されていなかったECM成分の確認、今までに報告されていた局在パタンとの相違を免疫電子顕微鏡法によって明らかにし、これを報告した。
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