研究概要 |
本研究の目的は、ヒト好中球の細胞内顆粒、特に従来の特殊顆粒とは異なるGPI(glycosyl-phosphatidylinositol)アンカー型蛋白質を含む新しい細胞内顆粒の特性を明らかにすることである。先ずGPI-アンカー型蛋白質であるalkaline phosphatase(ALPase)の分布様式と動態解析を進めた。その解析を行うために、特定の細胞内顆粒膜上に微量に存在するALPase分子を高い解像力で同定し、その動態を明らかにできる新しい形態学的解析法“レプリカ酵素細胞化学"を開発した。レプリカ酵素細胞化学は、生体膜のレプリカ上で酵素分子を酵素細胞化学的に標識し電子顕微鏡で観察する手法である。この手法を用いてALPaseの分布様式を検討してみると、ALPaseは細胞内の小顆粒に存在しており、更にこの分子はその顆粒膜の内表面に限局していることを初めて形態学的に証明した。このことは、GPI-アンカー型蛋白分子であるALPaseの生化学的研究の結果から予測される分子局在様式と非常によい一致を示した。次に生体膜のALPase分子が他のGPI-アンカー型蛋白分子とどの様に関わりを持っているのか、その相互関係を明らかにする必要性に迫られた。そこで我々は更に、同一レプリカ膜上でのALPase分子を酵素細胞化学的に標識すると同時にCD16等の他のGPIアンカー型蛋白質を免疫細胞化学的に標識する多重標識法の開発に成功した。これによりGPI-アンカー型蛋白分子を含む顆粒の同定・二次元分布様式・分子間の相互関係を高解像力で明らかにすることが可能となった。現在この新しい形態学的手法を用いてGPI-アンカー型蛋白分子、更には接着分子であるCD11b(CR3 receptor),CD62L(L-selectin)等の細胞内局在と動態解析を精力的に進めている段階である。
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