研究概要 |
申請者は、これまでにニワトリ胚心臓よりBMP(骨形成因子)ファミリー遺伝子を6種類(BMP2、5、6、7、dorsalin-1、新規BMP)単離した。BMP2mRNAは、outflowtract(OT)、atrioventricular canal(AV)の心筋細胞層にのみ局在し、内皮細胞、間葉には存在しないことを明らかにした。この発現パターンは、BMP2がAV、OT領域での心内皮細胞の間葉細胞への形質転換に強く関与している可能性を示唆した。AV領域の器官培養系においてAntisense oligo DNAを使ってBMP2の活性を特異的に抑制すると、心内皮細胞の形質転換は抑制され、BMP2がこの現象にかかわっていることが明らかになった。本研究において、さらにBMP2が心内皮細胞に直接作用しているのかどうかを明らかにするため、AV領域の心内皮細胞だけを培養し、動物細胞に発現させた組み換え型BMP2を作用させてみた。しかし、BMP2による心内皮細胞の形質転換は観察されなかった。これまでにAV領域での内皮細胞の形質転換にはTGF(形質転換成長因子)-β3が、かかわっていることが明らかにされている。そこで、BMP2をTGF-β3とともに心内皮細胞に作用させたところ、TGF-β3の活性を促進し,心内皮細胞を間葉へ分化させた。現在、この協調作用がどのような仕組みによって生じるのか解析している。また、他のBMPについて局在が明らかになりつつあり、BMP間の相互関係についても解析を試みている。
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