研究概要 |
我々は、申請書に記載した実験計画に沿って研究を行い、次のような結果を得た。ショウジョウバエのEz遺伝子に相同なcDNAを3種の動物から単離し解析した。それぞれヒト遺伝子をENX-2、マウスのものをEnx-2、アフリカツメガエルの遺伝子をEnx-αと名付けた。ヒトENX-2遺伝子は702アミノ酸を、マウスEnx-2遺伝子は750アミノ酸を、そしてアフリカツメガエルEnx-α遺伝子は755アミノ酸をコードしていることが明らかとなった。これらのEz相同蛋白質は、N末端に3つの保存されたモチーフ(BOX1,BOX2,BOX3)を持ち、核移行シグナル、システインの豊富なCXCモチーフ、そしてC末端にはSETモチーフを有していた。C末端に見られるSETモチーフは、ヒト急性リンパ救性白血病に関連のあるALL-1/Hrx蛋白質と高い相同性が認められた。我々はENX-2遺伝子と白血病との関連を調べるために、各種ヒト血球系細胞株を用いてノーザン分析を行った。その結果、Jurkat及びMolt4のT細胞性白血病の細胞株において、ENX-2mRNAの発現が認められた。このことから、本遺伝子はT細胞性白血病の発症に関与する可能性も考えられる。また、アフリカツメガエルEnx-α遺伝子に関しては卵成熟過程における発現のパターンを免疫組織化学的手法を用いて調べたところ、全ステージに発現していることが明かとなった。このことはEnx-α蛋白質が、卵の成熟及び初期発生に重要な役割を果たしていることを示唆している。 これら新規蛋白質には、上述したように、アミノ酸配列の全域にわたって特徴的なモチーフが見られる。これらのモチーフのいずれかは、特定の塩基配列を有するDNAあるいは特定の蛋白質因子を認識すると推測しており、これらEz相同蛋白質が転写因子、または細胞内シグナル伝達に関与する因子として働いている可能性を考えており、現在我々は、次のような実験を進めている。(1)ゲル移動度シフト法を用いてDNA結合能を調べる。(2)ENX-2/Enx-2蛋白質に対する抗体を用いた免疫沈降法やyeast two-hybrid法等を用い、蛋白質-蛋白質相互作用を調べる。これらの実験を通じて、Ez相同蛋白質の機能を明らかにしてゆく予定である。
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