研究概要 |
本年度は病態下、特に腫瘍時におけるリンパ循環、そして、リンパ節循環を解明する目的で、リンパ掖の圧・流量の調節に直接関与すると考えられるリンパ節被膜平滑筋の種々生理活性物質に対する反応性を薬理学的に検討した。加えて、リンパ管構築の変化と、リンパ節郭清後のリンパ動態を評価するため、ウサギ膝窩リンパ節を摘出した後、リンパ流の再疎通してくる様子をリンパ管造影法を用い経時的に観察した。 1. リンパ節被膜平滑筋の薬物反応 イヌ気管気管支リンパ節を摘出した後、柱状の標本を作製した。これをクレブス液で灌流している臓器槽内に装着し、発生張力を等尺性に記録した。リンパ節被膜平滑筋は、高K^+クレブス液、カテコールアミン、アセチルコリンに対して顕著な収縮を誘起した。これに対して、プロスタグランジンF_<2α>、トロンポキサン A_2アナログであるU46,619に対しては高濃度領域でのみわずかな収縮を認めた。一方、ヒスタミン、セロトニン、ATPに対してはほとんど反応が認められなかった。 2. リンパ管切断後の再疎通 ウサギ膝窩リンパ節を摘出した後、経時的に節前リンパ管より油性造影剤であるリピオドールウルトラフルイドを順行性に注入し、X線透視下にてリンパ管再疎通の様子を観察した。摘出直後から1週間後においては膝窩部に造影剤の貯留が見られるのみであったが、ほぼ1ヶ月後より節後リンパ管とともに側副リンパ管が描出されるようになった。 以上より、リンパ節循環の調節にはアドレナリン、ノルアドレナリン、もしくは、アセチルコリンの関与していることが示唆された。さらに、リンパ管は切断された後、数週間の単位で再疎通と側副リンパ管開通の生じてくることが判明した。今後は、腫瘍時、そして、腫瘍の治療に際してのリンパ動態変化をより詳細に解析してゆきたい。
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