研究概要 |
胸腺発育におけるgrowth hormone(GH)-insulin-like growth factor-I(IGF-I)系の生物学的役割を検討するために、下垂体摘出ラットおよび疑似処理ラットを用いて胸腺重量、胸腺リンパ球数、血清IGF-I濃度、血清GH濃度を調べ、これらの相関関係を検討した。 下垂体摘出および疑似処置は生後3週齢で行い、実験には術後7日目以降に用いた。胸腺重量は摘出直後の胸腺の湿重量を微量電子天秤にて、胸腺リンパ球数は回収された胸腺リンパ球をhemocytemeterにて、また血清IGF-I濃度と結晶GH濃度はradioimmunoassay(RIA)にて測定した。その結果、下垂体摘出ラットの胸腺重量、胸腺リンパ球数、血清IGF-I濃度のいずれも、疑似処置ラットのそれらと比べ有意に減少していた。下垂体摘出および疑似処置両群の胸腺重量と胸腺リンパ球数および血清IGF-I濃度との間には有意な相関が認められた(胸腺重量と胸腺リンパ球数:相関係数0.883,p<0.0001;胸腺重量と血清IGF-I濃度:相関係数0.767,p<0.0001;胸腺リンパ球数と血清IGF-I濃度:0.845,p<0.0001)。しかし、下垂体摘出後の経過日数と胸腺重量、胸腺リンパ球数や血清IGF-I濃度との間に有意な相関は認められなかった。血清GH濃度もRIAにて測定を試みたが、上記の検討項目との有意な相関は認められなかった。これはGHの分泌が超日リズムで変動することと、その半減期が20分と短いことによるのではないかと考えられ、生体内でのGH分泌を直接的に推定するためには経時的にGH濃度を測定する必要があり、本研究においては困難である。従って、GHの作用については、まずin vitroの系にて検討を加え、その結果をもとに、下垂体摘出あるいはGH欠如dwarfラットにexogeneousにGHを投与することによりGHのin vivoにおける作用を検討を加えるべきであると思われる。
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