核磁気共鳴画像法に応用された水プロトン緩和の組織差を、均一な構造と人為制御できる機能を持つ角膜と骨格筋を対象に研究した。角膜組織のコラーゲン格子配列と透光性は角膜内皮細胞層の損傷で障害され、骨格筋フィラメントの液晶構築の撹乱は収縮能に影響する。これらの構造・機能変化に伴う組織内水プロトンの挙動変化を核磁気共鳴法で調べた。 骨格筋は、ウシガエル縫工筋または半鍵様筋の機械的スキンドファイバーを標準としてその縦・横緩和経過を検討した。測定にはX線回折用のキャピラリー中に単離絹糸でファイバーを導入した。温血のウサギ腸腰筋の化学的スキンドファイバー束では全水分量の一割弱がバルク溶液中の水と同等に振舞った。カエルでは弛緩時のATPase活性が低く、バルク溶液がほとんどなくても10mMのクレアチンリン酸加弛緩液中で硬直に移行する以前に全測定を終了できた。 硬直と弛緩の筋を比べると前者で緩和が遅く、これが硬直でのアクトミオシンクロスブリッジ形成によることが、筋フィラメント間のオーバラップがなくなるまでに引き伸ばしたファイバーとの比較で明らかになった。これに対して角膜中の水プロトンは、膨潤して透光性を失った標本でも新鮮で透明な標本と違いなく、このとき角膜の硬さにも著変がなかった。 これらの実験を通し、硬直骨格筋や角膜中の水プロトンには、サブミリ秒のオーダーからの緩和測定が必要とわかったので核磁気共鳴装置のハードウェアを改造した。ソフトウェアで分光器のCPUボードを介してパルス制御するのでなく、CPMGパルス列を直接発生するハードウェアをブレッドボード上に作成した。これにより、マイクロ秒オーダーの繰り返し時間でのCPMGパルス列で、骨格筋と角膜の水のプロトンの横緩和時間経過が得られるようになった。
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