研究課題
前年度に引き続き、主としてハムスター精子に対し先体反応誘発物質として卵透明帯を可溶化したものを投与した際の細胞内Q反応について、Ca上昇と先体胞開口分泌の時間的関係および電位依存性L型Caチャネルの関与について解析を進めた。またサイクリックヌクレオチド(cAMP、cGMP)の効果についても検討した。[Ca上昇と先体胞開口分泌の時間的関係]可溶化卵透明帯の投与に対し、精子細胞内Ca濃度は頭部内赤道部付近から上昇が始まり約0.6秒以内に先体胞を除く頭部全体に伝播した後、2分以上にわたり高いレベルに保たれた。その間に、先体胞の蛍光強度が急激に減少する現象が観察された。これは開口分泌により先体胞内部の蛍光色素が細胞外に流出したためと考えられる。Ca上昇の開始から先体胞開口分泌開始までの平均時間は22秒であった。[電位依存性L型Caチャネルの関与の検討]L型Caチャネル阻害剤の存在下では、透明帯によるCa反応の増加相のパターンや速度、およびピークの大きさは影響されなかったが、Ca上昇の持続時間が有意に短くなった。また、先体胞開口分泌も阻害されたことから、L型Caチャネルによって細胞内Caが長時間高濃度に維持されることが開口分泌に必要であることが示唆された。[サイクリックヌクレオチドの効果]予備的な実験において、細胞膜透過性のサイクリックヌクレオチドのアナログ、8-br-cGrS4Pや8-br-cAMPの投与により精子内Ca上昇が観察された例があったが、ケイジドcGMP(膜透過性)をロードした精子のどの部分に紫外線照射しても、Ca上昇は誘発されなかった。サイクリックヌクレオチドと精子内Caの関係については、さらに検討が必要である。
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