本研究は、神経型一酸化窒素合成酵素(NOS)の中枢神経系における活性調節の機構を解明するとともに、中枢性の自律神経調節におけるNOSの生理的意義を明らかにすることを目的とする。 そのために、まず、flavin adenine dinucleotide (FAD)によるNOSの活性化の作用機序の解析を試みた。ラット脳のシナプス細胞膜画分を界面活性剤で可溶化後、FAD agarose affinity chromatographyによって、FADと相互作用する蛋白質を精製し、溶出される蛋白質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、部分アミノ酸配列を決定した。決定したアミノ酸配列をホモロジー検索したところ、この蛋白質はグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD)であることが判明した。GPDは細胞質に局在するので、細胞外からのFADと相互作用する可能性が考えられなかった。他にもこの方法でFADと相互作用する蛋白質が認められたが、やはり細胞質に局在する物質であった。細胞質とシナプス膜画分を完全に分離できないため、この方法ではFADと相互作用する物質に細胞質中のFADを補酵素とする酵素がたくさんとれてきてしまうと考えられた。 そこで次に、神経型NOSと相互作用する蛋白質を検索することによりNOSの活性調節及び役割の解明を試みた。まず、yeast two-hybrid法によってNOSのN末端部分のPDZ domainと相互作用する蛋白質を検索した。いくつかのポジテイブクローンが得られており、現在、NOSとの相互作用を検討中である。さらに、GST-NOS融合蛋白質を大腸菌に産生させてカラムを作製し、牛脳の細胞膜画分からNOSと結合する蛋白質を精製し、部分アミノ酸配列を決定した。最近、抗体が作成できたので今後NOSとの相互作用、及び細胞内、組織内分布に関して詳細な検討を行なう予定である。
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