本研究は、ラットを用いて神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の中枢神経系における活性調節の機構を解明するとともに、中枢性の自律神経調節におけるnNOSの生理的意義を明らかにすることを目的とする。そこで、nNOSと相互作用する蛋白質を検索することによりnNOSの活性調節および役割の解明を試みた。即ち、nNOSのPDZドメインをGST融合蛋白質として大腸菌に発現させ、これを用いてnNOSアフィニティーカラムを作製し、nNOSと結合するタンパク質を牛脳から精製した。その結果、nNOSと結合する58KDaの蛋白質を見いだし、この分子をマイクロシーケンシング法により解析したところα1-syntrophinと判明した。nNOSとα1-syntrophinが骨格筋において結合していることは、すでに報告されていたが、中枢神経系での両蛋白質の結合は不明であった。そこで、脳における両蛋白質の相互作用について検討した。まず、α1-syntrophinの抗体を作製し、免疫細胞染色を行ったところ、培養脳神経細胞でnNOSとα1-syntrophinが共存していることが認められた。免疫組織化学染色では、視床下部PVH、および視交叉上核(SCN)など、nNOSが発現しているニューロンにα1-syntrophinの顕著なシグナルが検出された。さらに、共焦点顕微鏡を用いた実験で、nNOSとα1-syntrophin両蛋白質が、PVHやSCNの細胞の一部で共存していることが観察された。 以上の結果は、nNOSが視床下部の機能において重要であること、また視床下部においてnNOSがα1-syntrophinと結合していることを示唆する。
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