研究概要 |
インターロイキン1β(IL-1β)をラットの視床下部の内、視索前野(POA)に投与すると痛覚過敏が腹内側核(VMH)に投与すると鎮痛が生じる。これらの反応はシクロオキシゲナーゼ阻害剤で消失するのでプロスタノイド依存性の反応である。視床下部では、IL-1βはプロスタノイドの内、プロスタグランジンE2(PGE2)の産生を特異的に促すので、本研究では、PGE2が視床下部で痛覚をどう修飾するのか、また、その反応はどの受容体を介して生じるのかについて検討した。 実験には雄ウイスターラットを用いた。実験1週間前に麻酔下でガイドカニューレとスタイレットを目的とする核の1.0mm上まで埋め込んだ。実験当日、薬物0.2μlを視床下部の内、POA、室傍核、VMH、外側野に局所投与し、ホットプレートテストを用いて侵害受容の変化(後肢の払いのけ動作を開始するまでの潜時、paw-withdrawal latency)を観察した。EP1,2,3レセプターアゴニストとして17-phenyl-ω-trinor PGE2、butaprost、M&B28767を、EP1レセプターアンタゴニストとしてSC19220を用いた。 PGE2(5-50fg)とM&B28767(0.05-5fg)をPOAに投与すると15分後にpaw-withdrawal latencyの短縮が、PGE2(5-500pg)と17-phenyl-ω-trinor PGE2(500 pg)をVMHに投与すると5-10分後にpaw-withdrawal latency の延長が認められた。また、PGE2(500 pg)をVMHに投与したときに生じるpaw-withdrawal latencyの延長はSC19220(150 ng)の同時投与により消失した。したがって、IL-1βはPOAでEP3受容体を介して痛覚過敏を、VMHでEP1受容体を介して鎮痛を生じると考えられる。
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