本研究は本年度に瞬間的血圧変動を起こすために必要なオンライン・リアルタイム制御装置を開発して、来年度にこれを用いて実際に交感神経活動の応答を調べる計画である。 1.制御システム いずれの方法により瞬間的血圧変動を誘発させる場合にも、その制御には時間分解能にすぐれ、時間遅れがほとんど生じない制御を行なう必要がある。この目的を達成するためには、当大学の複数講座で共同利用しているリアルタイム制御可能なコンピュータ(コンカレント(Real Time Unix))が適当であるが、利用形態から独占した利用が出来ない。そこでこれと同等以上の能力を有し本研究で占有出来る安価なコンピュータシステムを調査したところ、完全なリアルタイム・マルチタクス処理でアナログデータを入力しながら機器を制御出来るものは存在しなかった。よって、安価なパーソナルコンピュータ上でリアルタイム制御を可能にするオペレーティングシステム(OS)を動作させ、またアナログ・ディジタル変換器とディジタル入出力装置をこのコンピュータに内蔵させることにより制御装置として利用することとした。現在、UNIX likeで完全にフリーなOSとして近年その利用が急増しているLinuxを本研究補助金により購入したコンピュータ上で動作させ、また本補助金で購入したアナログ・ディジタル変換器はこのOS上にて動作させることを可能に出来た。 2.瞬間的血圧変動の誘発 この瞬間的な血圧変動を誘発させる目的は、これまでの研究結果から考えた仮説である“beat to beat baroreflex"を検証することにある。そこで誘発を開始するするタイミングが極めて重要であり、その時点における交感神経活動の放電パターンを判断した上で心周期の任意の位相にて刺激を開始する必要がある。このためには、これまでオフラインで行なってきた交感神経活動の放電様式の評価を1.のシステムを用いてオンラインで処理できるプログラムを作成する必要がある。このとき、同時にリアルタイムに心電図QRS complexの波形を認識させるようにする。これは意識下動物から記録する心電図は体動による変化が大きく、また時に筋電図などが混入しやすいので、血圧波形も同時に評価しながら心拍ごとの血圧計測と正確なR波の位置を同定するための補助的な情報として用いる。現在、この制御プログラムを作成中である。
|