本研究は瞬間的血圧変動を起こすために必要なオンライン・リアルタイム制御装置を開発し、これを用いて実際に交感神経活動の応答を調べる計画である。 1. 制御システム いずれの方法により瞬間的血圧変動を誘発させる場合にも、その制御には時間分解能にすぐれ、時間遅れがほとんど生じない制御を行なう必要がある。この目的を達成するためには、当大学の複数講座で共同利用しているリアルタイム制御可能なコンピュータ(コンカレント(Real Time Unix))が適当であるが、利用形態から独占した利用が出来ない。そこで昨年度、本研究補助金により購入したコンピュータにおいてUNIX likeで完全にフリーなOSであるLinuxを利用し、また本補助金で購入したアナログ・ディジタル変換器をリアルタイムに制御する目的のためにVictor Yodaiken (New Mexico Institute of Mining and Technology)らによって開発されたReal-Time Linuxを追加し、本変換器のコントロールに必要な部分は独自に開発した。これにより最高100マイクロ秒単位で最大8チャンネルのアナログ値を取り込む、更にその値を基に判断した結果を数百マイクロ秒の遅れで出力することが制御可能になった。 2. 瞬間的血圧変動の誘発 この瞬間的な血圧変動を誘発させる目的は、これまでの研究結果から考えた仮説である“beat to beat baroreflex"を検証することにある。そこで誘発を開始するするタイミングが極めて重要であり、その時点における交感神経活動の放電パターンを判断した上で心周期の任意の位相にて刺激を開始する必要がある。このためには、これまでオフラインで行なってきた交感神経活動の放電様式の評価を1.のシステムを用いてオンラインで処理できる制御プログラムを作成することが出来た。これにより神経活動は完全なディジタル処理により積分を行ない、その結果から群発放電が出現していない部分の積分値よりノイズレベルも自動的に決定することが可能となった。よって、群発放電に相当する積分値のピークの検出も自動化することができ、より客観的な評価が期待できる。このピークの出現状況は24時間オンラインでモニター出来るので、特定のパターン様式を判断させて任意の刺激を行なうようにしている。この時、同時にリアルタイムに心電図QRS complexの波形を認識させ、また心拍毎の収縮期、拡張期および平均血圧も算出することが出来るようにした。
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