GABAは、雌性ラットにおける排卵性LHサージの主要な中枢性調節因子であることが示唆されている。本研究ではまず、排卵性LHサージの発現時刻と行動概日リズムの位相関係とGABAニューロンの役割について検討した。その結果、視神経を切断した雌性ラットでは、主観的暗期終了後約10時間でLHサージのピークが認められ、行動概日リズムとLHサージは一定の位相関係にあることが明らかとなった。また、GABA_A受容体の阻害薬であるビククリン・メチオダイド(50mg/kg/hour)を発情前期の主観的午前中に投与すると、行動概日リズムの位相はほとんど影響を受けないが、LHサージのピーク時刻は約2時間早まり、両者の位相関係が一時的に解離することが判明した。以上より、概日リズムと排卵性LHサージはGABA_A受容体を介する機構によって一定の位相関係を維持していることが示唆された。この結果は、1997年度にEndocrinology138巻に公表した。 また、視床下部GABAニューロンの性周期中での変化を組織学的に検討するため、GABA産生酵素(GAD_<67>)に対する抗体を用いて免疫組織化学的検討も行った。GnRH陽性ニューロンが特に多く確認できたOVLT領域の外側にGAD_<67>陽性ニューロンの集団が存在すること、このGAD_<67>陽性ニューロンの数のラットの性成熟に伴って数倍に増加することは判明したが、排卵性LHサージ前(AM1100)、LHサージ中(PM1700)、卵巣適除ラットの3群間で、細胞数の変化や分布には明らかな違いは確認されなかった。 次に、内側視策前野におけるGABA分泌動態が、特に排卵性LHサージの前後で変化している可能性を考えた。無麻酔無拘束下で、脳内マイクロダイアリシス法を用いてGABAの分泌動態を解析するために、まず、高速液体クロマトグラフティーを用いた高感度のGABAアッセイ法の確立を行った。現在、GABAの最小検出量は20fmolであり、in vivoでの脳内マイクロダイアリシスサンプルの計測が可能となった。この系を用いて現在、ラット性周期中でのGABAの分泌動態を検討している。
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